2015-01-01から1年間の記事一覧

詩 予感

☆予感きみは本当に不思議な人だ 大学入学直後 きみと はじめて話した 十九のときから ぼくは そう感じてたぼくが一浪したと言うと きみは 『もし今年も受からなかったら どうしてた』と尋ね ぼくは 『たぶん二浪していたと思う』と答え すると きみは 『大学…

詩 宝石の時間

☆宝石の時間二十六年ぶりに きみに出会えて これからは 三年ごとに会えることに なったものの ぼくらはもう五十一になってしまったのこされた人生 会えるのは せいぜい十回 その一回一回が 宝石のような時間になるね昔の二人は 気持の行き違いの連続で 一緒…

詩 再会

☆再会四半世紀の時の流れのはてに こんな喜びの日のあることを 昨日までのぼくに どうして想像できたろうぼくの中で あなたは遠い人だったからあなたを遠い人とぼくは思いこんでいたからあなたを遠い人と ぼくは思いこもうとしていたから四半世紀の時の流れ…

詩 沈丁花

☆沈丁花春先 沈丁花の香りに気づいて 白と臙脂の小さな花たち を見やる時 いつもきみのことを 想ってしまうあれからもう 二十九年もの歳月が 過ぎてしまったきみの就職がきまり 叔母さんの家を出て 下宿先に引越す予定だったその日 雨で引越しできなかったき…

詩 小鉄への挽歌

☆小鉄への挽歌こてっちゃん…と呼んでみる うららかな春まっさかりの陽ざしのなかに 消えていったおまえぼくの腕のなかで おまえは眠りながら はかなくなって行く ぼく達のわかれは きっとそんなふうに訪れると ぼくはずっと信じてきたというのにこてっちゃん…

詩 わかれ

☆わかれいちまいの みず色の かみの上に ひとつの すきとおるような かなしみがういていたみず色の かみは ぼくの にがい海のなかで ぼんやりと ゆれていたつめたい緊張が ふゆの朝日のような まぶしさだったあなたが ほろびさろうとする ひととき ぼくの海…

詩 悔恨

☆悔恨あなたの中に あの日の あの わずかばかりの時間は どんな形に のこっているのだろうか どんなメロディーを しらべているのだろうかすぎさった秋のかずなど いまさら かぞえたくもない ぼくは ただ 雨がふるたびに あの日の あなたが すこしづつ とろけ…

詩 はじめに

最後に詩を。 散逸してしまったものが多く、手許に残ってるのは僅かだけど。

露出形・被覆形の起源について⑨

Ⓖ露出形 o 〜被覆形 a 対応型☆siro(白)〜sira sira-ka(白髪) sira-kasi(志邏伽之=白樫) sira-katuku(白香付) 註、意味未詳。枕詞。 sira-kÏ-wonö(新羅斧) sira-ku(白く) 註、下二段活用の動詞。 sira-kumo(白雲) sira-sagi(白鷺) 註、ギの…

露出形・被覆形の起源について⑧

Ⓕ露出形 ï ( i )〜被覆形 ö ( o )対応型☆awi(藍)〜awo awo(青) 註、上代においては複合語の中で使われた例が多いが、露出形として使われた例もある。 awo-unafara(青海原) awo-uma(青馬) awo-kaki(青垣) awo-kusa(青草) awo-kubi(青衿) aw…

露出形・被覆形の起源について⑦

Ⓔ露出形 ï ( i )〜被覆形 u 対応型☆isi(石)〜isu isu-nö-kami(石上)☆kamï(神)〜kamu kamu-agaru(崩る=神上る) kamu-oya(神祖) kamu-gakari(神懸) kamu-kaze(神風) kamu-gatari(神語) kamu-kafi(神穎) kamu-kara(神随=神柄) kamu-kï…

露出形・被覆形の起源について⑥

Ⓓ露出形 e 〜被覆形 i 対応型☆te(風、方角)〜ti idu-ti(何処=何方) ko-ti(東風) faya-ti(疾風) si-fasu(十二月=風駈す) 註、以下のシはチの子音交替形。 ara-si(嵐=荒風) ni-si(西、西風) fi-muka-si(東)☆fe(方)〜fi sö-ga-fi(背向=…

露出形・被覆形の起源について⑤

Ⓒ露出形 ë 〜被覆形 i 対応型 ※被覆形が連母音のうち後続母音ではなく先行母音が脱落したとみられる特異な例。☆fë(瓮)〜fi mo-fi(■〈土偏に完〉) 註、モは「盛る」の語幹。

露出形・被覆形の起源について④

Ⓑ露出形 ë( e )〜被覆形 ö( o )対応型 ※被覆形が a の母音交替形 ö で対応している型☆kë(日)〜ko ko-ti(東風) 註、東風を意味するコチはヒムカシよりも古い語彙で、元は東方と東風の二つの意味を持っていたと思う。ヒムカシのヒと同様にコチのコも元…

露出形・被覆形の起源について③

☆nafë(苗)〜nafa nafa-sirö(苗代)☆nifë(贄)〜nifa nifa-kï(庭酒=贄酒) 註、キは甲類・乙類双方の表記が見られるが乙類が古形とみる。二へは本来「神に捧げる食物」の意だが、ここでは転じて「神聖な」「めでたい」の意味で使われていると思われる。…

露出形・被覆形の起源について②

語例は無印のものは時代別国語大辞典上代編(以下、上代語辞典と略す)、❂印のものは岩波古語辞典に拠った。Ⓐ露出形 ë( e )〜被覆形 a 型☆akë(朱)〜aka aka-kagati(赤酸醤) 註、赤いホオズキ。 aka-gane(銅) aka-kinu(赤絹) aka-goma(赤駒) aka-…

露出形・被覆形の起源について①

「『ねこ』の語源を考える」を何とか書き終えたので、引き続き「露出形・被覆形の起源について」を書きたい。とは言っても詳しく書くだけの時間は無いので、基本的な考え方は以前にはてなハイクに書いたこの記事を読んでいただきたい。http://h.hatena.ne.jp…

『ねこ』の語源を考える⑯

日本猫が通って来た道 「『ねこ』の語源━━私の仮説」の所で、日本には紀元前500年頃に猫が渡来したと書きました。しかしこの私の説が成立するためには紀元前500年以前に中国に猫が居なければなりません。通説では中国に猫が入ったのはそれより1000年以上も後…

『ねこ』の語源を考える⑮

唐猫は舶来の猫か? 『からねこ』について、辞書にはこう書かれています。①からねこ【唐猫】舶来のネコ。上流社会で珍重愛翫された。のちには一般のネコにもいう。(岩波古語辞典) ②からねこ【唐猫】(中国から渡来したことから)舶来の猫。(大辞林) ③か…

『ねこ』の語源を考える⑭

『たたけ』について 「大辞林」(三省堂)には『たたけ』についてこう書かれています。たたけ【狸】〔「たたげ」とも〕 (1)タヌキの異名。〔名義抄〕 (2)タヌキの毛。筆の穂に用いる。〔日葡〕 (2)の記事があるのは大辞林だけですが、(1)については…

『ねこ』の語源を考える⑬

『おて』の語源 全国方言辞典と同じ著者による「分類方言辞典」(1954年、東京堂出版)には、『ねこ』の方言もいろいろ掲載されていますが、意外性で際立っているのが『おて』(滋賀県蒲生郡八幡)という方言でしょう。 東條操氏はこの項目に「→えて」と書き…

『ねこ』の語源を考える⑫

『かな』の語源 江戸時代の方言辞書「物類称呼」(越谷吾山著、1775年)にはこんな記述があります。 「かなといふ事はむかしむさしの国金沢の文庫に 唐より書籍(しょじゃく)をとりよせて納めしに 船中の鼠ふせぎにねこを乗(のせ)て来る 其猫を金沢の唐ね…

『ねこ』の語源を考える⑪

けれどもⒶの説に対しては批判もありますから、批判について検証してみたいと思います。❶縄文時代の遺跡から出て来る骨はツシマヤマネコのような山猫の骨ではないのか? ❷記紀万葉といった古い文献に猫に関する記述が無いのは、その時代に日本に猫がいなかっ…

『ねこ』の語源を考える⑩

『ねこ』の語源━━私の仮説 『ねこ』の語源を考える時、私には気になることがあります。nekoという言葉にeという母音が含まれていることです。 日本語の歴史を遡ってみると、「古事記」「日本書紀」「風土記」などが書かれた8世紀には a・i・Ï ・u・e・ë・o…

『ねこ』の語源を考える⑨

それでは『ねこま』の語源は何なのでしょうか?『ねこ』の部分については後ほど詳しく述べる事として、『ねこま』の『ま』にについて考えてみます。 『岩波古語辞典』の『ま』の項目を引くと次のような『ま』が載っています。 ①目②馬③間・際④魔 またmaと子音…

『ねこ』の語源を考える⑧

『ねこま』の語源説 『ねこ』の別称『ねこま』について、室町時代の1445年頃に書かれたとみられる百科辞書「✱挨嚢鈔(あいのうしょう)」には、こんな記述があります。✱『あい』は原本では土偏に蓋。同音同義の『挨』で代用しました。著者行誉は京都観勝寺(…

『ねこ』の語源を考える⑦

近世以後の動詞『ねる(寝る)』に相当する古語は二つあります。『ぬ』と『いぬ』の二つです。ともに下二段活用の動詞ですから、複合語を作る時に使われる連用形は、それぞれ『ね』『いね』となります。 『ぬ』の連用形『ね』の場合は語形上の問題はありませ…

『ねこ』の語源を考える⑥

『寝子』説の問題点 『寝子』説がいつ頃誰によって言い出されたのかは明らかではありません。1889年(明治22年)刊の「言海」に「✱或云、寝子ノ義」とありますから、少なくともそれ以前から『寝子』説があったことは確かですが、提唱者の確認はできませんで…

『ねこ』の語源を考える⑤

問題の『う』ですが、源氏物語には「考える」を『かうがへる』(行幸)、「讒言(ざんげん)」を『ざうげん』(柏木)と記した例もあって、こうした撥音を『う』で表記した例が同じ源氏物語中に見いだせる点からみても、『ねうねう』が実際にはnen-nenと発音され…

『ねこ』の語源を考える④

『ねうこ』説の問題点 1936年(昭和11年)に「蚕糸界報」に連載された石田孫太郎氏の「虎猫平太郎」の第10回(9月号掲載)「ねこと云ふ言葉」に、歴史学者津國登一氏の説として「…現今猫の啼聲をニャンニャンと云って、これにコを附し、ニャンコと呼ぶやうに、源氏…