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語源を考える〜『きんたま』

『きんたま』の語源について、「日本語源大辞典」(前田富祺監修、2005年、小学館)にはこう書かふれている。

きん-たま【金玉・睾丸】
睾丸の俗称。✦天正本節用集 1590
[語源説]
❶イキノタマ(生玉)の上略音便か〈大言海〉。
❷キビシタマ(緊玉)の義。キビシは生命にかかわる意〈名言通〉。
※名言通……服部宜著。1835年。

ネット辞書等は以下の通り。

ニコニコ大百科
金玉
金玉とは、哺乳類の精巣である睾丸の俗称である。
ω概要ω
睾丸を金玉と呼ぶようになった語源は、
1.大事なもの・貴重であるものの象徴である「金」になぞらえ、「金の玉」と呼んだ。
2.江戸時代以前の日本酒には清酒が存在せず、いわゆるどぶろくであった。このどぶろくを精液に見立て「酒(き)の玉」と呼び、それが訛って「きんたま」となった。
などの説がある。

Wikipedia
精巣
名称
精巣は金玉と俗称されるが、実際に金色をしている訳ではない。この名称の由来には諸説ある。
阿刀田高は、金玉の語源を「酒の玉」(きのたま)としている。江戸時代以前の日本酒に清酒は存在せず、濁り酒、どぶろくだった。精液をこのどぶろくに見立てて、精液が製造される器官を「酒の玉」と称した。〈 by ことばの博物館(旺文社文庫)〉

‖ kougan no hanashi by Jin ‖
睾丸の話
広辞苑」の編者として知られる新村出(しんむら・いずる)に「犬のふぐり・松ふぐり」という随筆がある。
そこには、こんなふうに書かれている。
松ボックリを関西では松フグリと呼ぶ。
日本で最初の分類式百科事典「和名抄」の形体部には、“陰嚢、俗名布久利”とある。
もっとさかのぼれば、一般に、ふくらみがあって垂れさがっているものをフクロとかフクリと呼んだ。
まるまるふくれて釣糸の先に垂れさがる河豚(フク、フグ)の語源も、そこにある。
肺も大昔にはフクフクシと言った。
以下、新村出の言葉をそのまま引用する。
この “フクフクシという肺の名が、キモを表すことにもなる。
キモダマという俗語もあるが、今日の testiculus の俗語キンタマがこのあたりから派出したのかもしれない。 ”
testiculus は睾丸の学名
キモは肺だったのか……
胸のなか、いわゆるハートのことだろうか。
解剖学以前の話である、厳密に考えてもしかたがない。
とにかく、碩学新村出さえ“かもしれない”と保留しているのだから、結論を急がず、きんたまの決定的な語源説は、まだない、としておこう。
きんたまの語源説を、(もう)ひとつ紹介する。
きんたまは、もとは“生の玉(いきのたま)”と言った。
それが、いきのたま→きのたま→きんたま
という具合に変わっていった、と。

‖ 吹風日記 ‖
あの玉はどのへんが金なのか、金玉娘と金玉姫、金玉は金の玉より重し
……この「キンタマ」の語源には諸説ありまして、決定版はないようです。最も面白いのは阿刀田高が著書『ことばの博物館』で述べている説です。いわく、「キンタマ」はかつて「キノタマ」であり、それは「酒(き)の玉」の意味である。「御神酒(おみき)」という言葉で分かるように、「酒」は「き」と読んだのである。では、なぜ酒なのかというと、当時の酒はドブロクで、白くてドロドロしており、それがキンタマの中に入っている例のアレと、ほら、よく似ているではないか。
大変面白い説ですが、資料的裏付けがないのが残念です。どなたか睾丸の意味で「酒の玉」を使っている例をご存じの方はお知らせください。
ネットで調べたところ、他にも、「生き玉」がなまったものだ、とか、「気溜まり」が変化したのだ、とか、はては、ぶつけると「きーん」と痛むから「きん玉」だ、とか、いろいろな説がありました。「睾丸の話」という素晴らしいページによれば、「広辞苑」の編者・新村出は、「キモダマ」から「キンタマ」になったのではないかと推測しているそうです。
「金色に光るから金玉だ」ということであれば、夜道とかで便利そうですが、どうやら、そういうわけではなさそうです。ちなみに陰嚢を解剖して精巣そのものを取り出すと、白い色をしているのだとか。
ところで、「金のように価値があるから金玉だ」という説にはそれなりの説得力がありますが、私としてはこの説明には反論したいところです。
……ともかく、金玉のほうが、金の玉よりはるかに価値があると、私は言いたい!

Wiktionary 日本語版 ‖
きんたま
語源
「金玉」の用字は重箱読みであるが、天正本節用集(1590年)には用字に先立ち、「キンタマ」の語が見られることから、「金玉」は当て字と考えられる。なお、語源として、以下のものが挙げられる(日本国語大辞典)。
■イキノタマ(生玉)(大言海
■キビシタマ(緊玉)(名言通)


阿刀田高の「酒の玉」説が人気のようだけど、酒の別名(ただし厳密に言うと酒と同義ではない)の
『き』は『みき(神酒)』『しろき(白酒)』『くろき(黒酒)』のいずれにおいても語尾に来ているので『酒(き)の玉』のような語頭に『き』が来る用法があり得たかどうか疑問。
また日本酒の清酒が江戸時代以前には無かったという想定も疑問がある。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E9%85%92%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2

全国方言辞典(東條操編、1951年、東京堂出版)にはこんな言葉が載っている。

きんかあたま……はげ頭。京(俚言集覧)・淡路島・岡山・出雲・山口。

方言とは言っても江戸時代に京で使われていたのだから、当時の中央語だね。
この『きんか』は「金瓜」でマクワウリのことらしい。禿げ頭を金色に輝くマクワウリに見立てた表現のようだ。この『きんかあたま』が『きんかあたま→きんかたま→きんたま』となり、更に陰嚢を禿げ頭に見立てて「陰嚢=きんたま」と言うようになったのではないかと推測してみた。