詩 予感

  ☆予感

きみは本当に不思議な人だ
大学入学直後
きみと はじめて話した
十九のときから
ぼくは そう感じてた

ぼくが一浪したと言うと
きみは
『もし今年も受からなかったら どうしてた』と尋ね
ぼくは
『たぶん二浪していたと思う』と答え
すると きみは
『大学ってそれほどの価値があるものなのかしら?』と
言ったね

それを
皮肉屋さんの口調で言うわけでもなく
ちょっと相手をやりこめて
優越感にひたろうとしているふうでもなく
きみは本当に真摯に答えを求めていた

そんな人に出遇ったのは はじめてだった
この人は 普通の人とはちがう
この人は ぼくの人生の中でとても大切な人になる
━━はじめて話したきみに ぼくはそう予感していた

それなのに
どうして きみと
わかれてしまったのか
それも
ぼくの方から
わかれてしまったなんて

きみとの再会の日
実はきみに逢えるなんて
ぼくは少しも思っていなくって
きっと
少しでもそれを予想していたなら
ぼくは行かなかっただろう

きみは怒っているだろうし
恨んでいるだろうし
二人の間にはきっと
気まずい空気が流れて
━━と
すっかり ぼくは思いこんでいたから

きみに
笑顔で迎えてもらえるなんて
心底 思ってもいなかった
あの笑顔を見た瞬間
きみの ぼくへの思いに
やっと ぼくは気づかされた
あまりにも 遅すぎたけど

はじめて出遇ったときの予感が
今ごろになって よみがえって来る
きみは やはり大切な人だったと

それなのに
どうして きみと
わかれてしまったのか
それも
ぼくの方から
わかれてしまったなんて

いま
あの時の答えを思いだす
『大学そのものに
価値があるとか 無いとかじゃなく
ぼくらが 大学生活を
価値あるものに するかしないかが
問題なんじゃ ないだろうか』
ぼくは確か そう答えたと思う
その答えは 今も変わらない
でも ひとつ つけ加えることがある

ぼくにとっては
きみに出遇えただけで
大学に行った価値があったのだと