詩 小鉄への挽歌

  ☆小鉄への挽歌

こてっちゃん…と呼んでみる
うららかな春まっさかりの陽ざしのなかに
消えていったおまえ

ぼくの腕のなかで
おまえは眠りながら
はかなくなって行く
ぼく達のわかれは
きっとそんなふうに訪れると
ぼくはずっと信じてきたというのに

こてっちゃん
エメラルドグリーンのその瞳に
じっと見つめられたことも
タンポポのわた毛のようだった柔らかな毛に
そっと触れたことも
すず虫のような透明な声がききたくて
ギュッとだきしめたことも
いまでは美しい夢を見ていたかのようだ

くる日もくる日も
おまえの姿はあらわれず
いたずらに憶い出だけが
へやの中によどんでいる

どうしてなんだい…こてっちゃん
こんな別れかたはしたくなかった
さよならのひと言も言わせてくれず
いってしまったおまえ

もういちど
みどりの土手をかけぬける
おまえの姿が見たかった
もういちど
おまえの9.5kgの体重を
この膝にうけてみたかった
もういちど
舌をしまい忘れたままで眠っている
おまえの寝顔を見ていたかった

こてっちゃん…と
何度つぶやいてみても
おまえに逢えるわけではないが
それでもやはり言ってみる
こてっちゃん…と