『ねこ』の語源を考える⑬

『おて』の語源 全国方言辞典と同じ著者による「分類方言辞典」(1954年、東京堂出版)には、『ねこ』の方言もいろいろ掲載されていますが、意外性で際立っているのが『おて』(滋賀県蒲生郡八幡)という方言でしょう。 東條操氏はこの項目に「→えて」と書き…

『ねこ』の語源を考える⑫

『かな』の語源 江戸時代の方言辞書「物類称呼」(越谷吾山著、1775年)にはこんな記述があります。 「かなといふ事はむかしむさしの国金沢の文庫に 唐より書籍(しょじゃく)をとりよせて納めしに 船中の鼠ふせぎにねこを乗(のせ)て来る 其猫を金沢の唐ね…

『ねこ』の語源を考える⑪

けれどもⒶの説に対しては批判もありますから、批判について検証してみたいと思います。❶縄文時代の遺跡から出て来る骨はツシマヤマネコのような山猫の骨ではないのか? ❷記紀万葉といった古い文献に猫に関する記述が無いのは、その時代に日本に猫がいなかっ…

『ねこ』の語源を考える⑩

『ねこ』の語源━━私の仮説 『ねこ』の語源を考える時、私には気になることがあります。nekoという言葉にeという母音が含まれていることです。 日本語の歴史を遡ってみると、「古事記」「日本書紀」「風土記」などが書かれた8世紀には a・i・Ï ・u・e・ë・o…

『ねこ』の語源を考える⑨

それでは『ねこま』の語源は何なのでしょうか?『ねこ』の部分については後ほど詳しく述べる事として、『ねこま』の『ま』にについて考えてみます。 『岩波古語辞典』の『ま』の項目を引くと次のような『ま』が載っています。 ①目②馬③間・際④魔 またmaと子音…

『ねこ』の語源を考える⑧

『ねこま』の語源説 『ねこ』の別称『ねこま』について、室町時代の1445年頃に書かれたとみられる百科辞書「✱挨嚢鈔(あいのうしょう)」には、こんな記述があります。✱『あい』は原本では土偏に蓋。同音同義の『挨』で代用しました。著者行誉は京都観勝寺(…

『ねこ』の語源を考える⑦

近世以後の動詞『ねる(寝る)』に相当する古語は二つあります。『ぬ』と『いぬ』の二つです。ともに下二段活用の動詞ですから、複合語を作る時に使われる連用形は、それぞれ『ね』『いね』となります。 『ぬ』の連用形『ね』の場合は語形上の問題はありませ…

『ねこ』の語源を考える⑥

『寝子』説の問題点 『寝子』説がいつ頃誰によって言い出されたのかは明らかではありません。1889年(明治22年)刊の「言海」に「✱或云、寝子ノ義」とありますから、少なくともそれ以前から『寝子』説があったことは確かですが、提唱者の確認はできませんで…

『ねこ』の語源を考える⑤

問題の『う』ですが、源氏物語には「考える」を『かうがへる』(行幸)、「讒言(ざんげん)」を『ざうげん』(柏木)と記した例もあって、こうした撥音を『う』で表記した例が同じ源氏物語中に見いだせる点からみても、『ねうねう』が実際にはnen-nenと発音され…

『ねこ』の語源を考える④

『ねうこ』説の問題点 1936年(昭和11年)に「蚕糸界報」に連載された石田孫太郎氏の「虎猫平太郎」の第10回(9月号掲載)「ねこと云ふ言葉」に、歴史学者津國登一氏の説として「…現今猫の啼聲をニャンニャンと云って、これにコを附し、ニャンコと呼ぶやうに、源氏…

『ねこ』の語源を考える③

◆④の説は擬声語+接尾辞という構造で考えている点では①の『ねうこ』説と共通であり、なおかつ音韻変化の面での『ねうこ』説の弱点を克服する説として登場したもので、「広辞苑」のほか「新潮社国語辞典」「岩波古語辞典」等辞書ではこの説を採用しているもの…

『ねこ』の語源を考える②

かつてCats誌の1991年3月号で、皆川澄子さんに『ねこ』の語源についての私の考えを紹介していただいた事があります。 気がつけば、それからはや四半世紀近くの長い歳月が流れてしまいました。その間、いつかはきちんとした形で私の考えをまとめておきたいと…

『ねこ』の語源を考える①

はじめに以前、はてなダイアリーに「『ねこ』の語源を考える」を途中まで書いたのだけど、はてなハイクを退会したらはてなダイアリーの記事も消えてしまったので改めて書きます。とは言っても、現在所持金も残り少なくなり、3月14日でスマホが使えなくなるの…